もうこはん日記

いまだ青い尻を晒せ

春に鎮痛剤を

春は落ち着かない。

「桜は散ってしまうから美しい」と言う。その通りだと思う。でも、すぐに散ってしまう桜を前から楽しみに待って、いざ満開になったら「散ってしまわないうちに…」と急いで花見なんぞ企画する。
例えば、これも何だか忙しなくて落ち着かない。

春になると情緒不安定になる。普段から情緒は一定していない気もするが、春は特に顕著に乱れるのだ。これは昔からそうなのだ。
今年は何だか気候も不安定で「春だねぇ」としみじみする陽気でもないが、やっぱり気持ちの方も落ち着かない。
なんてったって春だから。

「春は出会いの季節」だから、つまり「別れの季節」でもある。
落ち着かないのは、まぁ、その辺も原因の一つなんだろう。


大学に入ってから五年目の春を迎えた。
五年目だと言うのに、授業がびっしりと入っている。
それは単位が足りないからだ。あっはっは。
今までの四年間で殆どまともに行ったことのない一限の授業にも出席せねばならない。というか、午前中から大学にいることすら久しぶりだ。

拷問のようなドイツ語の授業から開放されてみれば、この時期ならではの人の多さ。
目を輝かせた新入生らしき学生が次の教室を探してウロウロしてたりする。「よし、この五年目のベテランが案内しようか?学校でウンコするのは研究塔が落ち着くよ。ついでに君、ジャニーズ事務所の黒い噂教えてあげる。業界って汚れてるんだよー、ネット情報だけど」そんな風に話しかけてみたら、何秒くらいで逃げるかな。ちょっと試してみたい。

一、二年の辺りによく溜まった喫煙所に行ってみても、あの頃は当たり前のように会っていた友達はもういない。
そっちの世界はどんなだい?あぁ、お前の華のない笑顔が懐かしいよ。いつもここで授業をさぼって、だらだら煙草吸ってたよな。勝手に逝っちまいやがって…。ちくしょう、よりによって一輪車で事故るなんてな。全く、お前らしいぜ…。そういえば、もうすぐお前の命日だな。今年も、あのガードレールにお前の好きだった酒とシイタケを供えに行くよ。青春アバヨと泣けてきたぜ。あぁ、お前がいないとホント寂しいよ。なぁ…アキヨシ…。
自分で突っ込むのも面倒になってきたけど、勿論嘘だ。
というか、ごめんね。あはは。

同期で入学した友達は殆ど卒業した。
学校で一人サンドイッチなど齧っていると、油断してセンチメンタルになったりする。
でも、僕は一年目で早々に留年を決めたので、専修に友達がいるのだ。先見の明があったのだ。良かったぜ。
でも、油断すると早くも「六年目の春」を意識しそうになる「五年目の春」はちょっとまずいよな。


以前は起きたら大体「とくダネ!」の時間だった。テレビ画面の小倉に「てめぇ、なんでそんなに偉そうなんだよ。朝から吐き気がすんだよ!」と悪態をついて目を覚ましていた。最近は下手すると昼のワイドショーだった。何とか「答えてちょーだい!」の時間に起きても、つい川合に「いや、やっぱりほのぼのしてていいよ!でも菊間は残念だったね」と暖かい声援を送ってしまい、満足して二度寝しちゃったりするのだ。

これはイカンザキ。

というわけで、先日は思い切ってモーニングコールを頼んでみた。別れた彼女に。
朝から「人間のクズ」扱いされて目が覚めた。ありがとうございました。でも、頼んだらしてくれたから優しいんだね。ボキ、35位になったら金持ってそうな気が何となくするから、そしたら結婚してあげるね。そう言ったら「夢見てんじゃねーよ!」と切られた。とっくに愛想尽かされているけれど、そろそろ人間としても愛想尽かされる。
というわけで、味噌汁の匂いで目を覚まさせてくれる女の子がどこかに落っこちてたら交番に届けずにネコババしたい。乳はもう問いません。あはは。
その後、シャワーを浴びようとしたらガスが止まっていた。少し泣けた。

大量に溜めた公共料金を一通り支払ったら、金がない。
今日から針灸師になるための学校も通い始めて、全身のツボを把握するために東洋医学の本も買わなきゃいけないのに(あぁ、嘘だよ)
バイトもシーズンオフでどうしよう。
単位も金も足りない。

「駄目な人専用の奨学金制度」とかないのか。大学でしっかりしてる奴なんてさ、きっとどこ行ってもしっかりしてんだよ。だからもうさ、すぐにでも集団農場にぶち込んで汗水垂らして働いてもらって夕方には肩組んで友情語りながらビールで乾杯して明日に備えて早く寝て日曜日には「健全な魂」のためのレクリエーションでお芸術を鑑賞してもらってさ。大丈夫、うまくやれるぜ。スッキリして美しい社会じゃないか。ソ連共産主義の理想だぜ。で、肝心なのは、その余剰生産分をこっちに回して欲しいのね。駄目な奴に余分な金持たすと、きっと面白いと思うなぁ。そもそも、君達がせっせと「明るい未来」目指して私有財産溜め込もうとするからおかしくなるんじゃないのかしら。お前らみんなユダヤ人か愛知県民かよ!ボキなんかちょっと小金が入ったら調子付いて奢ったり無駄遣いして、すぐに還元しちゃうんだけどな。でさ、集団農場で納得いかなかったら革命に走って良く分かんないテロやってさ。そしたら君はこっち側だ。奨学金を受け取る立場だ。で、もうみんな革命始めちゃって、しまいには国民全員テロリスト化。素晴らしいアナーキーだ。どうだ、これ?ちょっとは考えろよ、国もヨォー!

まぁ、実際社会に出てちゃんとやってる人に言ったら、張り倒されそうだ。いざ面と向かって説教されたら、ごめんなさいと謝ると思う。
堕落しきるのも中々難しいチャレンジングだ。


こんな風な感じで落ち着かない気分なのだけれど、思い出した用に時々歯が痛くなる。
歯が痛いとじっくり情緒不安定に浸れないので、鎮静剤を飲む。
で、その内なんか気持ち良くなって、特に痛まないのに飲んでみたりする。ビールに錠剤を浮かべて思春期を追体験してみたくなったりもする。
今日は成分無調整豆乳でバファリンを飲み干した。健康志向だから。
「全体的にぼんやりしてるんだけど、発作的に鋭角になる感情」みたいな感じは、春に合っている。


学校帰りの駅までの道、二人連れの女の子とすれ違う。
片一方の女の子の顔を何気なく見て、ハッとする。
どこかで見た気がする。いや、どこで見たのかははっきりしている。

「恋だった」と気づいたのは、彼女が遠くに行ってしまったからだ。そして、一緒にいた時間にそれと気づかなかったからこそ、思い出はいつまでも美しいシネマだ。彼女はいまでもこの世界のどこかで生きている。でも、僕が好きだったのはあの頃の彼女だ。もうどこにもいない、あの春の日の彼女だ。

友達と談笑する女の子の表情が、あの頃の彼女と重なる。あまりにも似すぎていた。フラッシュバックのように思い出が明滅し、僕の心は古い映画を再上映を始めた。

殆ど無意識のうちに、駅までの道を外れた彼女達の後をついていった。古い映画をデジタルリマスター版で見たかったのか。

人気の少ない裏通りを彼女達は歩く。
気になっていることが二つあった。
彼女達の言葉は明らかに日本語ではなく、早口の韓国語だ。
まぁ、それはいい。僕の愛は島国根性じゃないから、竹島なんて欲しければ上げるよ。全然問題ない。大事なのは愛だ。
もう一つ。
何でこの娘たちは腕組んで歩いているのだろう。幾らなんでも仲良すぎないか。
でも、それも文化の違いかもしれない。僕は君を友達から遠ざけて独占しようなんてケチな心は持ってないからね。
そう思って一人うなづいていると、信じられないことが起こった。

彼女達は突然立ち止まり、キスをした。

うそ。
…いや、でもまぁ…愛って色んなカタチがあるし、そうゆうのも尊重するし、僕もちょっとだけホモっ気あるかな、って…。いや、なんなら女装するしさ。

僕の恋は二重苦だ。
国籍、セックス関係のリーチ目だ。
いや、僕は広く深い愛を胸に抱いて生きているんだ。まだまだ負けない。まとめて受け入れよう。

街角で愛を交わした彼女達は、後ろで佇んでいる僕に気がついたようだ。
近づいてくる彼女達。
ポップでパンキッシュなラブストーリーがいま始まろうとしている昼下がり。
あの、追憶のマドンナの方の女の子が口を開いた。
「あの、スイマセンちょと時間いいですか。神様についてお話しませんか?そこに教会あります」
ででん、統一教会

「三重苦だ!」
僕は叫んだ。


自分で書いてて、本気で下らないね。
まぁいいか、春だし。


「春」について書いてるのだけれど、僕は夏が好きだ。
というか、何年か前の夏から季節が止まってる気がする。
夏が終わらなくて、秋はちょっと寒い夏、冬はかなり寒い夏、春はやっと暖かくなった初夏の始め。夏休みが終わったみたいな顔をしてみても、頭のどこかにはずっとセミが鳴いてる。
「永遠」は夏にある気がする。何となくそう思う。
だから、いま僕は終わらない夏の中で情緒不安定な春みたいなのを味わっているのか。自分でもよく分からんな。


もういい加減、そろそろ終わります。
最後、ちょっとだけ普通の日記ぽいの書いて終わります。


今日はSODの希望者任意参加のディスカッションに行って来た。
いや、行ったつもりだった。

全く着慣れないリクルートスーツを着て、アパートから中野にある本社まで歩いた。
しかし、歩いて三十分のAV製作会社を受けようとしているだけなのに、ネクタイが窮屈で仕方ない。僕ってば、社会で生きていけるのかしらね。ほんとに駄目奨学金くれ。

会場に着くと、何故か強烈なデジャブに襲われた。
前に説明会来たからな。いや、違う。全部同じじゃないか。
まるで白昼夢だった。鎮痛剤を飲みすぎたのだろうか。僕は時を駆けてしまう青年だったのか。そういえば何となくラベンダーの香りがするぞ。

何のことはない。単純に日にちか、やりなれないエンジャパンの予約手続きかを間違えて、すでに参加した説明会に来てしまったのだ。
自分にあきれ果てたが、開き直って参加することにした。
気合を入れて楽しむために、トイレでバファリンを飲んだ。やけくそ気味に質問をした。最後に書くエントリーシートには「二回目です。いや、本当に僕ってば御社が大好きなんですね」と正直に書いた。
結構楽しんで、また前と同じようにお土産まで貰って帰ろうとした。
帰ろうとした僕を、美人だけど化粧きつめで気が強そうな大人の女、という感じの人事が引き止めた。個室に来いと言う。
僕は大人しくつき従い、人事と二人、会議室に入った。

「あなたね、うちを舐めてるの?」
「いや、そんな事ないですよ。ただ、バファリンはもう止めようと…」
「…製作が希望だったわね。どんなものが撮りたいの?」
「それが…。僕はそんな特殊な性癖とか持ってないもんで」
「そんなんで、やっていけると思うの?」
「…あの、強いてゆうなら…どちらかと言えば…M気があるのかなと」
「ふ~ん」
「あっ、ちょっと…え?何するんですか!」
「うちがどうゆう会社か分かってるんでしょ?」
「え、だって、そんな。止めてください!」
「止めていいいの?」
「…」
「ほら、ハイヒールで踏まれるのがそんなにいいの?」
「…リクルート!」
「どうしたいか、言ってみなさいよ」
「…いや、それは、それは勿論御社に…」
「言って」
「入社したいです…にゅうしゃ、ニュウシャ…乳射したいです!!」
「ああ~ん!内定よぅ」



ああ
勿論嘘だよ。
もはや、何が本当で嘘か分からないね。
現代的だね。
しかも、ところどころパクッてるしね。部屋に転がってるエロ本とかからね。
こんな日記、全体に公開してたら書けないよね。
ま、春だしね。


ぱぱい。