もうこはん日記

いまだ青い尻を晒せ

恋文地獄篇

恋文地獄篇7~二度目の春・後編~

『拝啓愛しい恋人よ桜は散ってしまうから美しい、と人は言う。消えてしまうと分かっている儚いものを、人はどうして愛するのだろうか。桜は散ってしまい、そしてまた咲くのだ、それでいいじゃないか、と君は言う。でも、やっぱり僕には耐えられそうにない。…

恋文地獄篇6~二度目の春・前編~

『拝啓恋人よ春は人の心をゴム毬のようにするらしい。後先考えられずに弾んで、それから落ちる。出口のない部屋に転がってゆく。恋人よ、君は春に似ているのかもしれない。始末におけないのは、それが何度も巡って来るものだからだ。君はもう何度やって来て…

恋文地獄篇5~冬のおわり~

『拝啓。愛しい恋人よなにかに裏切られたとか、なにかを失ったとか、そんなときに思い出すのは、いつも君のことだった。それは君を恨んでいるからとか、そんなことばかりではないような気がする。悲しかったり、やりきれなかったりするときには、君が大きな…

恋文地獄篇4~冬のはじまり~

『拝啓恋人よ冬が来たようです。コンクリートの壁を伝うように、凍てつくような寒さが僕の部屋を包んでいます。そちらは、寒くはないでしょうか?恋人よ、こうして時候の挨拶なんて並べてみたって、意味のないことは分かっているんだ。どうせ君には届きはし…

恋文地獄篇3~秋~

『拝啓夏に出会った恋人よ秋は少し寒い夏、冬は寒すぎる夏、春は早い夏。夏が、いつまでも終わらない。 終わらせることが出来ない僕は、きっと生きているのか死んでいるか分からない顔をしているのでしょう。』 彼女が来ることもなくなって、私の部屋は散ら…

恋文地獄篇2~夏~

『拝啓愛しい恋人よ夏が来ています。外はきっと夏の匂いがして、それを感じれば、あの日の僕に戻れるような気がするかもしれません。でも、所詮は錯覚なのです。君と会ったのは、夏だった。あの頃は、吐き出す感情のままに生きてゆける気がしていた。何かに…

恋文地獄篇1~春~

『拝啓愛しい恋人よお元気ですか?僕は相変わらず。頭の中に羽虫を飼っているような毎日です。耳障りな雑音が、いつまでも鳴り止まない。でも、僕はやっと気づいたんだ。僕を混乱させるこのノイズこそが、実は本当に聞きたかったものだったんだと。何にも耳…