ベストキッド
映画『ベストキッド』。
1は何回か観てたんだけど2、3は観てなかった。なので立て続けに観賞した。
なんだ、普通に面白いじゃん。
特に2はミヤギさんの故郷、オキナワに行くんだけど、そのオキナワが、いわゆる海外映画の「ニッポン」。そして、そのオリエンタリズム具合は嫌いじゃなかった。
まあそもそも、沖縄って地理的にも気候的にも歴史的にも、とにかく異国ぽい。むかし何度か旅行したけど、着いた瞬間にもう「あ、なんか違う」って思ったもんね。実際に国際通りやその裏手の市場をうろついても、城跡や墓所を巡ってみても、あるいは基地の横のスナックでタコライスを食ってみても、どうしたって日本とはちょっと違うよ。空気が、匂いが、やっぱり異国。
つまりおれのような黄色い日本人でさえも、ある意味で沖縄にオリエンタリズムを感じていて、それが白いアメリカ人の「ニッポン」の文脈で表現された「オキナワ」にうまくはまったっていう感じか?
とにかく、いろいろと不自然なところは満載だけど、グルリと回ってあのオキナワはなんかいい。1からチェンジした新ヒロインが、絵に描いたような東洋美人。可愛い。旅先での恋、そそるよ。ちらりと戦争のことにも触れられる。まあこれは必然だろう。ダニエルさん、もろにアメ公だし。脚本は政治的にはわりと中立的な線をいってたように思う。脚本家の人は実際に空手の有段者で、役者に実技指導までしたらしい。
……って、舞台について書いてたけど、実際のロケ地は予算の都合でハワイだったらしいです。
まあ、それも色々グルリと回ってオリエンタリズムかね。
そして3。
1、2に比べると、どうもいまいち。なんか話的にもアラばっか目立った。
またヒロインチェンジするんだけど、結局はそのヒロインとは友達止まり。なんとなく気まずいっていうか、いいとこも見せられないうちにヒロインはいなくなってしまう。
なんの意味があったんだ! 普通に2の東洋美人続投か、それかヒロインなしでいいんじゃないのか。やっぱ予算か。それでも一応は女の子入れとけっていう、ハリウッド的なやつかね。
それにしてもダニエルは、いじめられっ子の癖にチャラいよな。女受けだけ妙にいい野郎だ。男友達なんてミヤギさんしかいない。ラテン系だから?
そしてなんとダニエル役のラルフ・マッチオは、3のときにはもう28歳だったらしい。確かにちょっと太ってはいたけど、恐るべき童顔。濱田岳か。
あとこれは、1も含めた三作を通しての感想だけど、まあ、総じてB級映画ってカテゴライズはされるだろう。
でもB級特有の全体的に安っぽかったり、ベタ演出だからこその魅力、それが十分にあった。
さっきも書いた通り、ダニエルさんはいじめられっ子、かつチャラい。そして毎回出て来る敵役、つうかいじめっ子がさ、みんなほんと、これでもかってくらい分かりやすく嫌な野郎(そういう演出、面構え)なわけよ。でもさ、ああいう奴らって、現実にいくらでもいるからね。しつこく恫喝されたり小突かれたりして「やめてくれよ!」とか言ってるダニエルさん観てたら、記憶が思い起こされたからね。これは単純で分かりやすい演出の成せる技じゃないか。
……物凄いハードにいじめられたって記憶はないんだけど、やっぱりそれなりに嫌な思い出とかはあるわけだよ。誰だって少しはあると思うけど。
例えば義務教育なんかはそれこそ学区っていう括りだけでランダムに仕分けられて狭い世界にぶち込まれてさ、はい、これからの数年間、このなかだけでうまくやって下さい、一応の監視はつけますが細かいところは自己責任で、ってなるわけでしょ。そら、全く言葉も通じない、動物園の檻の中かLAかサバンナにでもいるほうが自然なケダモノと同じようなガキは必然的に何人か交じってるよね。そういう奴らって、マジでやりたい放題やりやがるからね。でやっぱり支配しようとするんだよ、群れを、力で。それなりの公共心とそこそこ繊細な神経でも持ってれば、そういう奴らにはまず従いたくないし、とにかく腹が立つ。尻馬にも乗りたくない。それで自分の意地を張り通そうと思ったら、当然衝突するよね。で、やれちゃったりする。でも意地を通せなかったらそれはそれで悔しい気分がずっと残る。どっちにしろ不快だ。信じられないくらい嫌な奴っていたでしょう。びっくりするよな。自分が育ちいい温室出身だと、そういう剥き出しの悪意とか獣性にまず引いちゃうんだよ。
とにかく、思い出したんだよ、そういういじめっ子どもの顔を。
あー、脱線した。でもまだ脱線するぞ。
いじめっ子ってのは、自分がとても分かりやすい、漫画に出て来るようなイメージ通りの「いじめっ子」になってるって自覚してるのか。リアルタイムでも、大人になって自分の過去を振り返ってみても
きっとしてないんじゃないのか。
抱いているのはちょっと違うイメージだろう。少なくとも、自分が映画に出てくる嫌らしい敵役みたいだ、なんて思っちゃいないだろう。ちょっとヤンチャしてるけど実際は仲間思いの熱いおれ、とか冷たいナイフ、とかなんでもいいけど。やっぱり自分のイメージってのは、漫画でいうとこの主人公ポジションに重ねてるんじゃないのかな。やりたい放題のやつってのは特に。ワンピースでも湘南純愛組でもなんでもいいけど。「むかしおれワルだった」ってそれ単に頭と性格悪くて粗暴で他人の人格蹂躙してただけなんじゃねえの?
あるいは自己認識っていう概念すらそもそもないのか。つまりケダモノ。
どちらにしろ、くそ野郎が!
が、しかし。
自己イメージと実像が乖離するのは当然か。
いまおれはこうして「あのときよくも苛めてくれやがったな」とかウジウジ考えて、よしじゃあ今度同窓会にでも行ってあの野郎に「てめえはガキの頃からほんと最低の野郎だったぜ」と自分のイメージを正しく伝えてやろうじゃないか、と思ったりしている。
で、実際そうやって鼻息荒くして行ったとする。
そうすると、意外にもそのいじめっ子は、いい奴っていうかごく常識的な奴になっていて、むしろこの年齢に至ってまでそんなことに拘ってそれをこういう公共の場に持ち出してくるおれの方がイカレポンチ、みたいになってしまう。
きっと世間は、ま、世間までいかなくてもその場の空気はそうなるよね。
「あれあれ、おかしいな」って呟きながら、おれは寂しく会場の隅の方に追いやられる。
そこにいかにも学校を卒業して以来ずっと引きこもりです、精神状態は最高にヤバいですって感じの同級生が「ハァハァ」言いながら近寄ってくるんだ。そいつはおれに向かって叫ぶ。
「お前のせいでェェェ!」
懐に隠し持っていた包丁が、お腹にぶっすり。
苛めていた憶えなんて、おれにはない。それどころか、そいつの名前すらよく思い出せない。でもそいつは、ずっとおれのことを恨んでいたんだ。血がドクドク流れてる。
ジ・エンド・オブ・おれ。
うわ、きっつい。
そんなふうに自己イメージと実像は乖離しているかもしれない。例えば。
イメージなんて不確かで流動的なものだ。でもそれに我々はどうしたって支配されてるんだってさ。あと、そもそも実像ってなんだろう。あら、もう分かんねえ。
脱線しまくってなにが言いたかったかっていうと、なんかそういうことだよ。どういうことだよって、なんかもう分かんなくなってきたけど。なんとなく分かって。
画像を貼ったのは2の敵役の人ばっかだけど、1も3もなかなかです。
3前半部は、その敵役のほうを結構描いてたりするので、むしろ「そんなに悪いばっかではないのかな」と思うんだけど、そしてそれが真っ当な人物の描き方な気がするけど、でも後半でいよいよダニエル・ミヤギと対決! ってなると途端にまた分かりやすい悪役になってしまうわけですよ。
それに突っ込みを入れつつ、また考えるところも出てきたのでした。
あとね、やっぱ何度もいうけど、ダニエルはいじめられっ子なのにチャラいんだよ。基本情けない癖に女の子には積極的で、実際そうやって持ってくし。
2なんかあれだよ、オキナワ在住の敵役からしたらだね、いきなりやってきた毛唐にさ、地元の可愛い子ちゃんを目の前で掻っ攫われるわけですよ。
小突いてやりたくなる気持ちも、分かるんだよな。「のび太の癖に!」って。
でも最後は負けてしまうんだけど。敵役だからさ。ちょっと哀しいね。
というわけで、映画「ベストキッド」の感想でした。
さらっとメモのように書こうとしたら、無駄に長くなった。無駄が多い。まるでおれ自身のように。
あー疲れた。無駄に。
4もあるんだよな。監督違うし、ダニエル引退して女の子主演だけど。観る前から微妙な感じが分かるな。
ぱぱい。