もうこはん日記

いまだ青い尻を晒せ

青春は臭う

昨夜、撮影の後でジンギスカンをやった。そのうえ、大量のニンニクも摂取したので自分の臭いが気になった。
少なくとも、女性を引き寄せる匂いではないだろう。

更に、この文章を書いている現在、物凄い汗をかいた後で雨にも降られ、シャワーも浴びていない。
近年まれにみる臭さに違いない。風呂上りに下着の臭いを嗅いでみるのが若干楽しみだ。ドキドキする。


今日は下高井戸でやるテント芝居の建て込みの手伝いに行った。

集合時間に家を出たので遅刻は確定である。ギャラが派生するわけでもないのだけれど、一応は焦ってみた。
自転車をフルスピードで漕いで、荻窪辺りでショートカットを試みた。案の定、道に迷う。
住宅街を迷走していると、ふっと何か果実のような匂いがした。それは、うまく説明できないのだけど、僕には夏の匂いだった。

「人間の嗅覚は記憶中枢に一番深く結びついている」とよく言われるが、まさにその通りだと思う。
小学生の頃、見上げていた入道雲。田んぼ道と入道雲のコントラストは夏休みの始まりの風景で、このままママチャリでどこまででも行ける気がした。
あぜ道にはエロ本が落ちている。
高校の帰り。どぶ川の横の道を、ガリガリ君をかじりながら自転車を転がす。蝉が鳴き始め、緑が濃くなった景色。夏休みにはどこに行こう。誰と出会えて、どんな瞬間があるのだろう。
期待で胸一杯の僕に「お前んち寄ってエロ本読んでいい?」としつこい友人。

一瞬のうちに、こんな夏の光景を思い出した。
どうも僕は夏といったら自転車を漕いでいたみたいだ。エロ本はほんとはどうでもいい。読みたいけど。

なんとか目的地に着くと、荷降ろしの途中だった。
僕のいたところは、パイプでテントを建てたのだが、今回は三角の木枠を組み合わせてドーム型の巨大テントを作る。旅芝居ではなく、移動がないので随分と大掛かりだ。

久しぶりに腰袋を下げて足場の上で作業していると、ただ働きなのに気分がいい。ラチェットでクランプを閉める感じが好きなのだ。

野外で作業をしているときに感じる匂いもある。
金物や工具、土や汗が風で独特に混じりあった匂いだ。

思い出すのは、やはり僕がいたテント芝居である。
あの頃は、親方みたいな人の手元をやっていて最初のうちはかなり怒鳴られた。しかし、それすらも楽しかったのは「おいおい、おれ今パズーみたいじゃん。イカスぜ」と脳内でラピュタに浸っていたからかもしれないが。
いまはそれぞれ結婚していたり、京都でなぞの御茶屋(アヘン窟だと思う)を開こうとしていたり、何をしているのか分らなかったりするが、元気だろうか。僕がこんな性格になってしまった原因は、あの人たちにかなり求められると思う。

やや干渉に浸りながら、汗でズレたパンツを直していると「どうしたの?」と聞いてくる怪しげな女性。僕がいたところで衣装と役者をやっていた人だ。今回は彼女に呼びつけられて手伝いに借り出されたのだ。
正直に「ちんちんがズレた」と答えると、周りの人に「リョウタのちんちんがズレたって!」と大声で説明する。この人は昔から変わらないなと思う。


結局、朝九時から夜の八時までのただ働きだった。飯は出たし、煙草はちょろまかしたけど。


帰る途中、友人に会うと「いつもと感じが違う」と言われた。格好も作業姿であるし、妙に目がギラギラしているらしい。
そういえば、頻繁にそんな目つきになっていた頃もあった。夏の匂いで、その頃にトリップしたのかもしれない。
そんなときはいつでも暑かった。

目がギラギラしているときは、きっと僕はモテるぜ。モテまくるんだぜ。自分でも視界が広くなっているのが分るんだぜ。女は目で殺すんだぜ。
そう言ったら「いや、キモイから」とあっさり切られたけど、やっぱりモテるんだよ。ほんとだよ。きっと。そうでありたい。
しかし、わざとそんな目になろうとしても、中々出来ない。事実、今現在の僕の目は、いつもの死んだ魚の目に戻りつつある。


まぁ、何はともあれ、今日は夏の匂いを嗅いだのだ。

皆さんの好きな匂いは何ですか?
とか言っても誰も答えまいよ。
でも、もし「爪切りしたときに、ついつい自分の足の親指の爪を嗅いでしまう」という癖がある人がいたら、僕と話が合うかもしれません。
カラッとした夏の太陽の下、じめっと「ニオイ」の話をしましょう。



ぱぱい。